2026年1月22日(木)、七戸中央公民館大ホールで開催された、みちのくクボタ主催の「乾田直播研修会」に参加してきました。
今回の研修内容は「湛水型乾田直播」が中心で、多くの生産者が期待していた「節水型乾田直播」の研修ではありませんでした。メーカーの説明によると、節水型乾田直播はまだ十分な検証段階にあり、現時点で生産者へ積極的に推奨するのはリスクがある、とのことでした。確かに、その判断も理解できます。
当社では節水型乾田直播を主体として取り組んでいるため、栽培体系の方向性自体は異なります。しかし、共通する考え方や技術的な要素も多く、参加したことが無駄だったとは感じていません。
現状、節水型乾田直播に関する栽培技術や実践的な情報は、なかなか表に出てきません。そこでこのブログでは、同じ地域で米づくりに取り組む生産者の方々に向けて、自分が現場で得た知識や経験を、可能な限り公開していこうと考えています。
以降は、今回の研修内容を整理しながら、それを節水型乾田直播の視点に当てはめて解説していきます。
ただし、あくまで私個人が調べた情報と、当社の経験談なので、成果を保証するものではありません。あらかじめご了承下さい。
まずはじめに
- 不耕起V溝乾田直播栽培
- プラウ耕鎮圧体系乾田直播
- 振動ローラー式乾田直播
- 畝立て乾田直播
このように乾田直播にもいろいろな体系があります。主に使用する機械の違いによるものです。どれを選ぶかによって播種前の圃場準備作業が変わってきます。当社が取り組んでいるのは4畝立て乾田直播なので、以降こちらを主体として話を進めていきます。
1 排水対策・漏水対策
これは節水型・湛水型のどちらにも共通するポイントです。
重要なのは、春に向けて「いかに早く水田を乾かすか」という点です。作業は収穫後かまたは、春の雪解け後に行います。
ソイラー、カルチ、プラウなど、使用する機械は問いません。とにかく表面排水を効かせ、圃場内の水をできるだけ早く圃場外へ排出することが重要です。
漏水対策については、節水型乾田直播の場合、基本的に水源は雨水と走水のみとなるため、初期段階ではそれほど神経質になる必要はありません。
※ただし、ある程度苗が生育し、その後に湛水栽培へ切り替える場合は、漏水対策が必要になります。当社では、雨水や走水を無駄に逃がさないよう、クロ塗りを全面的に行う予定です。
※田んぼが早く乾けば、その分だけ早く播種作業に取り掛かることができます。
特に作付面積の大きい生産者ほど、そのメリットは大きくなります。
令和7年は春先に雨が多く、全国的に直播作業が遅れる傾向がありました。そのため、春先に圃場をいかに早く乾かせるかは、非常に重要なポイントになります。
2 土作り
これは一朝一夕で効果が出るものではないため、優先度はやや低めの対策になります。
ただし、堆肥を投入して土壌中の有機物を増やすことは、米に限らず、直播栽培全般に共通して有効な手法です。
ブロードキャスターで散布できるのであれば、鶏糞でも腐植酸資材でも構いません。各圃場の条件や作業体系に合わせて選択すればよいと思います。
当社では、全体の圃場をいくつかのブロックに分け、ローテーションで鶏糞を散布する計画です。今年は実施できませんでしたが、収穫後に作業時間を確保できれば、秋作業として取り入れたいと考えています。
3 品種選択
選択肢は限られているので、南部地域ならまっしぐらかはれわたり。現時点での情報では早生よりは中晩生が支持されているようです。
4 種子準備
ここは湛水型乾田直播と明確に異なる点です。
節水型乾田直播では、基本的に消毒や芽出し作業は行いません。
当社では、まず種籾に希釈したビール酵母を吹き付け、軽く湿らせます。その後、マイコス菌を混和し、最後にキヒゲンでコーティングして風乾させます。
なお、ビール酵母の使用が必須かどうかについては、現時点では判断がついていません。ビール酵母菌そのものが効いているというよりも、ビール酵母に含まれる亜リン酸溶液が、発芽率の向上や発芽促進に寄与している可能性が高いと考えています。
下記に、種子準備に関する記事へのリンクを貼っておきます。記事内で紹介している「イーストガード」という商品が、今回使用しているビール酵母になります。
▼種子準備の記事はこちら
節水型水稲栽培技術への挑戦 マイコスDDSR種子コーティング作業 - 農事組合法人 青森マエダライス
▼マイコス菌入手先
コメリで取扱いが始まったので、最寄りの店舗で取り寄せることが可能です。
▼ビール酵母(イーストガード)入手先
YGイーストガード | CSPLANET AGRIBIO
5 施肥
基肥については、水稲用の一発肥料よりも、直播専用肥料の使用をおすすめします。
ちなみに当社では、今年から農協系列の「てまいらず直播211(20-10-10)」を使用する予定です。選定理由は、肥料成分が溶け出すタイミングに違いがあるためです。
前年は、水稲用一発肥料(35-5-5)を全面散布しましたが、生育途中で肥料切れを起こし、結果として収量減につながりました。この経験から、直播栽培には直播用肥料の方が適していると判断しています。
現在、直播用肥料は各メーカーで積極的に開発が進められており、農協系資材に限らず、民間メーカーからも取り寄せが可能です。
施肥量については、窒素成分で10aあたり12kgを予定しています。
6 乾田直播における播種前後の作業
ここは播種する機械の種類によって違います。当社ではスリップローラーシーダーを使用しているため、ロータリー耕起ぐらいですが、ドリルシーダーなどは下記リンクを参考に作業を進めていただくと確実です。
▼農研機構 乾田直播栽培技術標準作業手順書
全文を閲覧するには利用者登録が必要です。
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/tarc/171169.html
7 播種床作りの留意点
6乾田直播における播種前後の作業と同様、リンク先のマニュアルに従い、播種機械に合った作業を行ってください。
8 播種時期・播種量
播種時期
当社の場合、作付面積が多いため水田が乾き次第播種作業を行う予定です。初期除草でラウンドアップを使用するため、隣接した他の生産者さんが移植作業に入る前に播種を終わらせるのが重要です。
播種時期が天候などによって遅れた場合、いつまで播種可能か。この情報は現状情報が少なく、参考までに当社の令和7年で言えば最も遅いのが6月2日でした。ただ収穫量が平均6俵とあまり参考にならない数字なので、播種時期の遅れと収穫量の関係は不明です。
播種量
節水型乾田直はにおいては、まだ検証段階です。人それぞれ、試している状態。参考までに令和7年の当社は約8㎏/反でした。発芽率を低く見積もって、多く播種する人もいれば、分けつを促進するため少なく播種する人もいます。当社としては昨年、発芽率がかなり良かったため今年は5㎏/反を播種する予定です。
令和7年の播種時期情報
赤川地区:5月15日播種、5月23日発芽確認(土の中)5月30日出芽確認(土から出た)参考記事はこちら▶マイコス米、乾田水稲直播栽培への取り組み - 農事組合法人 青森マエダライス
9 播種作業・播種深
これも播種機械によって違うと思います。スリップローラーなら1㎝~2㎝です。
10 鎮圧
畝立て乾田直播方式では、スリップローラーに鎮圧ローラーが付いているので不用です。
11 雑草対策
初期除草
- ロータリー耕ですきこむ前にラウンドアップで枯らす。
- 播種後~発芽前に雑草が見える場合には、ラウンドアップ&マーシェットの混合液を散布する。
- 土壌が湿っている場合、浸透によって薬害が生じる恐れがあるので、土壌水分と天候を確認する。
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初期除草の成否は、「①耕起前の工程」にかかっていると言っても過言ではないと思います。
参考資料の中には、圃場表面に草が生えていない場合は、耕起前のラウンドアップ散布を省略してもよいと記載されているものもあります。しかし、実際に圃場へ入り、わずかでも雑草が確認できる場合は、後に雑草が大量発生する前兆と考えた方が無難です。
また、表面だけで判断せず、土を少し掘り返して土中の雑草を確認することも重要です。地表と土中の両方を確認することで、現在の雑草量だけでなく、今後の発生リスクや生育間隔を把握することができます。
中後期除草
初期除草を徹底しても圃場によっては雑草が生えてきます。その場合は適切な除草剤を散布して対応します。イネ科雑草には対応する除草剤は豊富にあるのでここは心配する必要はありません。
- 播種後、ラウンドアップ&マーシェット混合液で打ち漏らした雑草に対しては昨年ノミニー液剤を散布しました。
- 以降は草の種類に合わせて早めに除草剤散布を心がければ、収穫不能になるほどの雑草被害には至らないと思います。
- 注意点として、圃場に水が無い状態なので粒状ではなく液状を使用すること。直播水稲に使用できるものを選ぶこと。
- 節水型乾田直播の雑草対策は、いかに雑草を抑えるか、から、いかに除草剤散布回数を減らせるかの段階に移っています。
12 水管理
節水型乾田直播では、基本的に田んぼを湛水(常時水を張る状態)しないまま育てます。水の供給は限定的で、雨水・走り水などが主な水源となるのが特徴です。これにより水管理作業そのものが大幅に省力化されます
- 播種後、水尻は解放し、大雨などによる地表面の停滞水が無いようにする。水が長らく停滞する場合、発芽が阻害される恐れがあります。このため暗渠設備がある圃場は、発芽して、ある程度苗が育つまでは暗渠は解放します。
- 雨水のみでも栽培は可能ですが、現在節水型栽培は収量増加を狙える段階に来ています。天気予報を見て、雨が降らない日が続くようなら水口から走水を入れる(土を湿らせる)。
- 成長後期では天気予報を確認しながら、走水の回数を増やす事で収穫量の増加が見込める報告が上がっています。
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まとめとして、当社では令和7年に、小川原湖付近の圃場において、給水インフラの無い「完全雨水条件」で節水型乾田直播栽培を行いました。
反収は約6俵と、当初の想定を下回る結果となりました。ただし、基肥の選択ミスなど、複数の要因が重なった可能性があるため、「雨水のみ」という栽培環境が、どの程度収量減に影響したのかについては、現時点では判断できていません。こちらについては令和8年に検証します。
12 病害虫対策
これは慣行栽培と同じです。但し播種量が多く慣行栽培より密集して生育した場合、いもち病の発生が懸念されます。
参考資料
▼マイコス菌、ビール酵母等資材などの資材を取扱っています
▼無断転載禁止なのでご自身でダウンロードが必要です。
▼農研機構 乾田直播栽培技術マニュアルver3.1
▼農研機構 乾田直播栽培技術標準作業手順書「宮城県石巻地位」
全文を閲覧するには利用者登録が必要です。
https://sop.naro.go.jp/document/detail/198
▼農研機構 乾田直播栽培体系標準作業手順書 ープラウ耕鎮圧体系―「東北地方版」
全文を閲覧するには利用者登録が必要です。
https://sop.naro.go.jp/document/detail/3